染織における人間国宝
日本の「わざ」の集大成
認定基準と今後の役割
「作家物」と言われる着物で、なかでも染織における「人間国宝」認定者の作品だけを展示しました。
木村雨山、羽田登喜男、森口華弘、福田喜重の訪問着を始めとし、22名、作品50点と、染色における「保持団体認定」の7団体の作品を合わせて、約70点の展示です。
戦後10年くらいまでのように、誰もが着物を着ている時は、作家物と区別せず、「職人技」で良い時代でした。「誰が作ろうが、これが好きだから、これを着る。」それでよかった時代でした。しかし、着物離れが進んで「この人の作品だから」高価でも着る人達に代わってきました。その変化に伴って「わざ」の伝承のためにも認定が必要になってきたのです。
重要文化財「各個認定」保持者(人間国宝)は、各分野において高度な技術を持つ個人に対して認定され、指定要件は特にありませんが、保持者が死去すると認定は解除されます。
1955年(昭和30)から認定が始まり、染織の世界では今までに47分野(45人・2012年現在)が認定され、現在は19分野(18人)が認定されています。
その他「保持団体認定」として7団体あります。文化財保護法に基づき、人間の「わざ」そのものである無形文化財のうち、とくに重要なものを指定し、日本の伝統的な「わざ」の継承をはかっているものです。
加賀友禅の語り部・能登一彦先生
喜如嘉の芭蕉布に染められた 人間国宝玉那覇有公(たまなはゆうこう)の沖縄紅型9寸帯
落款・お墨付きの持つ力
いつもの展示会より大勢の皆様にお出かけいただき、とくに、2日目には京都から「加賀友禅の語り部」能登一彦先生においでいただきました。
以前、2泊3日の「京都きもの学」実施研修で金沢に出かけた時も、今をときめく加賀友禅作家の2代目由水十久、兄の由水煌人、坂口幸市、柿本市郎等の先生方のアトリエまで入り、質問づくしでも快く応じていただき、とても実のある研修でした。
能登先生は昭和30年にこの業界に入られ、おりしもこの年から「人間国宝」の認定が始まり、加賀友禅では木村雨山が1名認定されました。(現在でもこの1名だけです)そして、若い身空で木村雨山の担当者になり、いろいろなエピソードをお持ちです。まさに加賀物(加賀友禅のことを呼ばれる)の生き字引です。その先生にお墨付きをいただいた着物もあって、とてもうれしく思います。今後も1枚ずつ丁寧に公開して行きたいと思います。
伊勢型紙作家4名と染師3名の作品左 / 稲垣稔次郎の型絵染 桃色訪問着 右 / 森口華弘の蒔き糊ぼかし訪問着
人間国宝 / 日本工芸会のホームページには、染織も含めて、陶芸や金工、漆芸、人形等の分野ごとの人間国宝が紹介されている。 詳しくはこちら