先人の技の素晴らしさに魅せられ、着物コレクションを始めてしまいました。-
    3000枚の着物たちに託された思い、布の有る喜びをとどけます。

今までに開催してきた講座などの一部を御紹介します
「着物の魅力と物を大切にする日本の暮らし」をキーワードに、
ご希望にあわせた内容でのミニ講座等の開催もお手伝い出来ます。お気軽にお問い合わせください。

着物コレクション! 始めてしまいました

目線を変えたら「不要品」が宝の山に!

私にもできる町づくり

パンフ.jpgNPOミズみずエコのパンフレットより 誰もが住みやすい町づくりを考えると、環境問題を避けてとおることはできません。「NPОいびがわミズみずエコスティーション」(以下、NPOミズみずエコ)の立ち上げから仲間とともにかかわり、女性の立場から活動の一部を担わせていただきました。
 私にもできること…… ほんの少しずつでも、みんなの心がけが集まれば大きな流れとなるはずです。
「不用品」と思える物も、少し目線を変える事で、今まで以上の彩りを持って生れ変わり、蘇ることができる。そんな思いからNPОミズみずエコの拠点「環境の駅」で、既に手元にあった着物や古布を活用した「リサイクル彩生(再生)講座」(以下、彩生講座」を、2000年より始めました。

古い着物や布のもつ魅力との出会い

_MG_0943.JPG絢爛豪華な花嫁衣装も、人知れずゴミになり捨てられていく 彩生講座を始めてしばらくたった頃、隣町に新しくできた「着物売ります。買いますのリサイクル店」を時々のぞくようになりました。店に通ううちに、今以上に勉強不足だったあの頃の私にも、手触りや色合いなど、少しずつ良い物が分かるようになり、自分自身の好みもはっきりしてきたので、一度に何十枚も買い求めたのが、着物コレクションのきっかけです。
 リサイクル店の開店当初は、「棚の着物は何枚だからいくら」といった大ざっぱな計算で販売していましたので、良い物も安く手に入れることができ、着物を布に分解して作る洋服や小物などの材料集めも兼ねて集めました。
 京都、長浜、岐阜、名古屋、東京など、出かけた先々で店をまわり集めてきましたが、「これがほしい」と特定の物になると、この方法で集めることに限界を感じ、最近はインターネットなども利用しています。
 そして「仲間ができたから仲良くしてね」と声をかけてコレクションに加えます。1枚1枚の着物の模様や意味など専門的なことを少しでも解明しながら、私なりの解釈でコレクションを増やしていきました。

集まってきた私のコレクション

 コレクションし始めると、物言わぬ着物や布が、また別の着物や出会いを呼んで仲間をふやしてくれるような、不思議なご縁を感じることがあります。
 老人施設で展示した時のことです。係の人から「認知症の方が、「これは私の着物だ」と、展示の場所に何度戻しても自分の部屋へ持って行く方がみえるのですが、どうしましょうか」と相談がありました。よくお聞きしたら、本当にご本人の着物だったのです。それは「母は施設に暮らしていますし、息子の私にも良くわからないので」と言われ、頂いた着物だったのです。
 同じ地域に暮らすとはいえ、お母様の思いと大切な着物との強い結びつきを感じたと同時に、たとえ高齢になっても美しくありたいと願う女性の心に胸をうちました。

より多くの出会いを求めて

049b.jpg出番を待つ着物たち NPОミズみずエコとの出会いが、彩生講座、着物コレクションへと広がっていった訳ですが、集め始めてしばらくすると、私の周りに集まってきてくれた着物たちを、またタンスに入れて自分一人でながめているだけでは、申し訳なく、かわいそうな気がしはじめました。この着物たちの有効利用を考えた時、「ラーニングアーバー樹庵」が想いうかび、コレクションの一部を持って樹庵へ相談に行きました。
 開口一番、小林社長(樹庵オーナー)から「ここの元校長室が空いているけれど、何か利用できないかなあ」と提案され、とんとん拍子に話は進み、二週間後には最初の展覧会を開催しました。
 毎回欠かさず来ていただけるリピーターの方も多く、皆さんに助けていただきながら、今年(2013年)で六年目、延べ40回を超える展覧会を開催して参りました。
 着物好きでもなかなか着る機会がなかった方が、友達と一緒に着物を着る機会を得たとして、感謝の言葉をかけていただくことも幾度もありました。
 また、若いある人は、これは祖母の帯、これは叔母からの頂き物、この半襟と帯上げは着物からリメイクした物と、上手にコーディネイトしながら、毎月、展覧会を見た後、自分の着物姿を写真に撮って帰っていかれました。展覧会は毎月1回でしたが、4年間の間に随分と着付けも上達されました。最近、「今日の着物は、自分で初めて新調しました」と嬉しそうに見せていただき、私もとてもうれしく思いました。

 休校した小学校の校舎を利用した多目的空間の樹庵は、路線バスが一日数本通るのみと、山間に位置するので交通の便が良くはありませんが、主にマイカーを利用して皆さん足を運んでいただいております。樹庵での展覧会の5周年企画として、2012年11月に開催した「衣100年の歩み・貧と富」では、4日間で400人を超える来場者があり、私にはとても充実した日々です。

伝統の技やかけがえのない思い出が、人知れず廃棄されゴミとなっていく現実

生活に彩りを取り戻す

016.jpg人の一生を超える様な時を超えて出番があった手描き友禅刺繍打掛 着物好きでも、実際は日々の事に謀殺され、もう何年もタンスを開けていない人が多くいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、すでに大人になった子どもさんの初着でもなんでも良いから、雛祭りや端午の節句には「絵のように壁に掛けて、その頃を思い出して下さいね。」と提案しています。「家族で懐かしい昔話ができ、虫干しにもなり、一石二鳥でした。今度は自分の着物も出したいですね」とおっしゃってくださいました。
 一つの着物を通して、花瓶に挿された花と同じように季節を感じたり、家族の絆が深まる。素敵な事ですね。

 また、先日、大正時代の花嫁衣装の出番がありました。
 NPОミズみずエコの仲間から忘年会をかねて結婚する二人のお祝いしたいので、二人に着物を貸してほしいとの依頼があり、花嫁衣装の着付けもできる「布有喜」の仲間と共にお祝いをしてきました。
 花婿さんは、体格がよく昔の黒紋付は小さくて着られないので白大島のアンサンブルに仙台平の袴でしたが、良く似合っておりました。花嫁さんは、御簾(みす)と御所車に鶴が舞う藤色の色打掛で、その下には、同じく大正時代の振袖をコーディネイト。30名ほどの披露宴でしたが、「次は私の結婚式にもお願いできますか? これはどこで借りることが出来るのですか?」などと、皆様にとても好評でした。
 打ち掛けさん、九十年ぶりの出番良かったね。


織りの美にかける熱き思いと「わざ」

_MG_7664.JPG堂本印象が描いた風景を織物で表現_MG_7551.JPG立体感のある膨れ織り713.jpg国宝日暮文蒔絵錦と外箱_MG_4623.JPG裏側は、何十色も緯(よこいと)が渡って、膨大な手仕事の集積が感じられる 「帯と言えば龍村」と、現在でも帯の世界では別格。
 大正から昭和初期頃には、「帯一本が家一軒」と言われていた初代・龍村平蔵は、従来にない独創的な帯を作るため、新技術の開発に打ち込んで、特許を数々とりましたが、同業者に次々と模造されました。
 そこで、誰にも真似のできない創作の為には、染織の歴史や古代裂の研究が不可欠であると痛感し、依頼の来た正倉院裂や、名物裂の復元を命がけで取り組み、さらに独創的で誰も真似のできない織物を手掛けてきました。
 平蔵の第二回展示会の後、作家・芥川龍之介は新聞記事に「恐るべき芸術的完成があり、私は何よりもこの芸術的完成のために頭を下げざるを得なかった」と寄せ、龍村平蔵の名を不動のものにし、織物の世界で「美術織物」と言われる分野を創りあげました。
 コレクションの一つ、写真の「国宝日暮文蒔絵錦」の丸帯は、平蔵の第二回展示会で出品された五本の目玉作品のうちの一本です。


身の回りの暮らし暮らしから地球環境を考える

「実物」の効果

IMG_2670.JPG色あせもなく綺麗な前側IMG_2672.JPG色があせて穴だらけの背中側IMG_2675.JPG裏に白い布があてられ、補強されている 講座では、実際に生活の中で使われた実物をお持ちしますので、歴史や制作工程、原料の特徴、技法の難しさなどをお話しするだけでなく、写真や話だけでは伝わりにくい、肌触りやかすれる音などからも様々な状況が感じ取れます。それらの相乗効果で皆さんの想像力をかき立て、私のつたない話でも、とても喜んでいただけます。

 さて、着物は「生活 = 衣食住」の基本要素の一つです。芸術的で贅沢な物は勿論のこと、生きる事を根底で支えてきた「庶民の着物」には、特別な「凄み」を感じることがあります。

 顔見知りの大学教授が「次の講義で、地域経済の観点からボロ(らんる)をテーマにするが、私自身も本物のボロは見たことがない」と言われたので、手元にあった数枚お貸ししました。すると「とても充実した講義ができました。」とのメールと、50名ほどの生徒さんの感想文を送っていただきました。
「衣服は今までおしゃれの為だけにあると思っていました・これからは流行だけに左右されずに買って大切にしたい・継ぎ接ぎの衣に美を感じました・継ぎ接ぎの半纏をコート代わりに着てみたい」などなど、学生たちの「衣服への思い」が少し変わった事を実感し、とてもうれしく思いました。
 その後、教授の奥様からも「夫からボロを見せてもらい、ビックリと同時に、とても感動しました。特に、あのブラウスにもう一度会いたいです」とも言われました。
 そのブラウスは、藍染の絣の着物から作られたもので、前からみると色あせもなく傷みはないのに、背中は色あせ、絣柄の白地がすれて穴だらけです。しかし、藍染糸の部分は穴一つありません。藍の強さがとてもよくわかると同時に、背中だけがすれている事から、割烹着を着て子供を背負っていたと想像出来て、着ていた人の生活まで見えてきます。正に百聞は一見にしかずです。
 料理、家事をするときに、衣服の汚れを防ぐために用いる袖のついた前掛け「割烹着」は、明治の中頃、東京日本橋に、現在の料理教室の前身「割烹教場」で、生徒たちの着物が油や水で汚れるのを防ぐために考案されました。私ぐらいの年齢なら、幼い兄弟をおんぶした母の割烹着姿は、とても懐かしい思い出ではないでしょうか。


等身大のエコロジーを目指して

026.jpg古い消防士の服(向かって右側)と着物や布団から作り直した女性の野良着024.jpg大きめの羽織に紐をつけた子供の着物 全ての「モノ」には歴史があります。原料、作った人、流通や販売に関わった人、使った人等に思いを巡らすと、使い古されて価値がないとされた物が、とたんに光を放ちはじめ「もう一度使ってみよう」と思えるかもしれません。
 まず、1、必要な人がそのまま使う。2、そのまま使えない物は、なるべく手をかけず、別の用途に使う。3、そしてだんだん使い方を変えていく。最近は「3R 」等ともよばれるエコロジーやリサイクルの考え方です。
 「3R」は、Reduce/リデュース = ごみを減らす(最初から増えない工夫をする)、Reuse/リユース = 繰り返し使う、Recycle/リサイクル = 資源として再利用するなど、最初にRがつく3つの言葉でエコを考える略称です。Rがつく言葉には、Refuse/リフューズ = 断る(過剰包装はいらない事を伝えるなど)、Reform /リフォーム = 手を加えて改良する、Remake/リメイク = 別の用途に作り変えるなどがあり、Rのつく言葉には、資源の循環を円滑にするキーワードが多く見つけられます。
 ノーベル平和賞を受賞したケニアの環境保護活動家・ワンガリ・マータイさんが世界に広めた「Mottainai/勿体無い/もったいない」も同じ様な視点に立った言葉です。しかも、「勿体無い」には、リデュース・リユース・リサイクルの3Rに加えて、自然への敬意込め「Respect/リスペクト」も含まれる考え方として、世界中から注目を集めています。エコロジーは、本来の日本人が持っている等身大の価値観なのです。



_MG_7544.jpg偶然と必然が生み出した美しいパッチワーク004.JPG「下掛け」 毛布代わりの防寒寝具001.JPG藍染め布を使い補修を繰り返した半纏 具体的には、着物 ⇒ 布団の皮、子どもの着物、風呂敷、もんぺなどに布としてリメイクする ⇒ 細く切って裂き織りの帯、敷物などに布を縄状に再加工してリメイク ⇒ 切って太い紐籠の肩掛けなど ⇒ 藍の様に防虫効果のある素材なら、縄編みにし火をつける蚊取り線香のように使う。⇒ そして灰になり畑に還します。
 ほんの少し前までは、これが当たり前の生活でした。しかし、これを生活全般に取り戻す事は無理でも、この精神だけは忘れないでいたいと思うのです。


008.JPG布を編んで背負い(しょい)カゴのストラップに利用014.JPG裂き織りの帯にリメイク 私の着物との出会い、職人の高度な技、庶民の物を大切にする暮らし等、一通り、「布有喜」の事を書かせていただきました。小さな古布の端裂れ一つからでも様々な事を感じ、明日からの生活に役立てていけます。これからも、集まった3,000点の着物や、帯、簪などと一緒に、「着物の魅力」と「物を大切にする日本の暮らし」をキーワードに情報発信をして参ります。

講座実績 / 2012年の一年間で 約40回
 女性団体 池田女性セミナー1回、揖斐川きららの会1回。環境の駅エコスティーション2回。
 瑞穂市生涯学習「彩生講座」10回。社会福祉協議会[痴呆予防教室]15回。ギャラリー「布有喜」8回。樹庵での予約講座 3回。

講座は、時間、場所、受講人数、受講対象者等により、主催者の方と調節しながら内容を決めています。詳しくはこちらからお問い合わせください。