先人の技の素晴らしさに魅せられ、着物コレクションを始めてしまいました。-
    3000枚の着物たちに託された思い、布の有る喜びをとどけます。

髪飾り

複雑な髪型を支える髪飾り

贅を尽くした小さな芸術品

「6月の花嫁展」の時、花嫁の展示に、文金高島田や角隠し、綿帽子、髪型などが抜きでは考えられないと思い、鬘(かつら)や花嫁簪(かんざし)をいくつか手に入れ、花嫁衣装と一緒に展示しました。
 かみ飾りの細かい細工と豪華さにすっかりとりこになりました。

 江戸前期までは大垂髪(おすべらかし)と言われる、束ねて後ろに垂らす髪型が多く、髪飾りもほとんど必要ありませんでした。しかし、髪型の移り変わりにより、かみ飾りも江戸中期ごろから色々使われるようになりました。
 かみ飾りは大きく、櫛(くし)、笄(こうがい)、簪(かんざし)に分けられます。
 櫛(くし)は誰にも見わけが付きますが、笄(こうがい)と簪(かんざし)の区別は分かりにくいものがあります。かみ飾りの先に耳かきが付いているのが簪(かんざし)とも言われています。
 びらびら簪(真鍮でできたびらびらがたくさんついている)や平打ち簪(金物製で平らな飾りが付いている)、玉簪(珊瑚、ヒスイ、金細工などの丸い玉が付いている)、花簪、つまみ細工簪(子ども・娘用)など、職業、年齢、季節、好みなどにより使用されていたのでしょうか。

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実用品から装飾品への変遷

 笄(こうがい)は結髪の根を固定する実用的な道具でしたが、髪型が複雑になるにつれ用途は後退し、装飾品となり「中割れ笄」がでてきました。この笄は結髪を八割がた作り終えてから、仕上げに髪にさせるように、中心で二つに分解できる笄です。私の持っている笄もほとんどこの形です。棒状に変化した「延べ棒」と呼ばれる笄もあります。
 昔は今のように髪を洗うことができなかったため、耳の掃除や、先を刺して頭皮を掻いたり実用的にも使われていたようです。

 かみ飾りは花嫁さんだけでなく、毎日の暮らしの中で使われていたことを知ったのは祖母からです。大正7年にお嫁に来た祖母は毎朝、小学校へ行く三人の小姑の頭を櫛や簪を使って、結いあげていたと聞いていました。
 そして、ごく最近、婚家が江戸時代からの小間物屋さんをされていた友達から、在庫として残っていた櫛や笄をたくさんいただきました。
 笄が1本ずつ和紙に包まれ、びらびら簪、櫛と笄のセット、つまみ細工簪もありました。一度に100種類以上の笄を手に入れ、感激です。独り占めしないで同じ種類の笄は、着物好きな人に差し上げたりしました。
 現在ではほとんど作られていない櫛や笄を、お楽しみいただきました。

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