縮緬(ちりめん)の長襦袢(ながじゅばん)
粋の神髄は見せないところ
生地の王様を下着に使う
長襦袢は下着です。着物の袖の振りや裾からちらりと見えることにより、一層、着物姿を粋におしゃれに引き立て役です。
見えないところに心配りする日本人の気質が良くあらわれている物の一つでしょうか。
男物の長襦袢はもちろん粋ですが、女物も使用される生地や文様など色々あり、目を見張るばかりです。
300枚ほどのコレクションの中から、今回は生地の中でも王様と言われる縮緬(シボの大きさなどにより色々な種類にわけられる)の長襦袢だけを展示しました。
明治中期になると合成染料が使用されるようになり、鮮やかな色で大胆な文様が染められるようになりました。技法は型染の小紋柄がほとんどですが、桶絞りで染め分けたもの、総絞り、裾模様風、刺繍、手描き物などあります。
コレクションの原点
子どもの頃、地味な母の着物の中にあった1枚の綺麗な着物。
「これが着たい、これが着たい」と言っても「これだけはダメ」と言われ、内緒で羽織ったりしたことを懐かしく思い出します。今にして思えば、あれは着物ではなく、縮緬の長襦袢だったんですね。
ところが40〜50年くらい前からは、薄い地色で綸子の長襦袢がほとんどになってしまいました。 縮緬はそのシボが絹の艶やかさや陰影を作り、ふっくら優しい着心地を作り出します。手触り、彩りにあこがれてはじめた縮緬のハギレ収集が私のコレクション歴の原点です。
縮緬(ちりめん) / 経糸(タテ糸)にほとんど撚り(より)のない糸、緯(ヨコ糸)に強く撚った右撚りと左撚りの生糸を交互に使った織りで、精練(絹糸の表面にあるたんぱく質を取る作業)すると糸が戻ろうとして、生地の表面にしぼ(凸凹)が現れる平織りの白生地。
綸子(りんず) / 経糸、緯ともに生糸(精練していない)を使い、地と模様を織りだし、そのあと精練するとなめらかで光沢のある白生地になる