振袖
ハレの記憶を伝える着物
いつの時代にも女子の心がときめく
現在目にする振袖と言えば、成人式や披露宴などの盛装、演歌歌手ってところですかね。しかし、本来の振袖は未婚女性が着用する最も格式の高い着物です。
袖丈の長さにより大・中・小振袖3種類に分けられます。大正から昭和初期には花嫁衣装として豪華な3枚重ねなどありましたが、一般的には、昭和30年代まで黒地の振袖でした。
三枚重ね(白・赤・黒)の振袖
私が幼い時代の結婚式は婚家の座敷で行われました。婚礼の行われる家が遠くとも出かけて、縁側から結婚式を終わりまで見せてもらったことを懐かしく思います。
明治から昭和初期の振袖色々
ふき付きで昔風 / 着丈でなく引きずって着るように、裾と袖口に綿をたくさん入れた仕立て方。「引き振袖」とも言われている。
洗い張り・色差し / 洗い張りは着物を解いて、もう一度それぞれをつないで1枚の布に戻し、水で洗い、しわがでないようにひっぱって乾かす。そして、色差しは、色がはげたり焼けたりしているところを書き直し、新品のようにする。
私の初めての振袖(下のトルソーも)
初めての振袖は踊りの発表会
私の成人式は和服禁止だったので、私の振袖との出会いは、習っていた日本舞踊の発表会でした。
近所の方から娘さんの洗い張りしてある花嫁衣装をいただき、その布で「ふき付きで昔風の振袖」に仕立てていただきました。黒錦紗地風景文様手描き京友禅の振袖で、舞台ではとても目立った様です。
この振袖は昭和初期に作られ、終戦直後の昭和24年ころで、新品はなく、京都の知人を頼りに古着を手に入れ、地元の染屋さんが洗い張りや色差しをし、花嫁本人が仕立てて着用された貴重なものでした。
展示会ではお二人の結婚式の写真と共に、トルソーに振袖を着付けて展示しました。
この展示会の様子を撮影し差し上げたところ、ご本人から懐かしさあふれる御返事をいただきました。一枚の着物が、時を超えて心を通じ合う瞬間です。